要点
- 構成要素: マーケットストラクチャーは、意味のあるスイングハイとスイングローから組み上がる。この二つが、今後の値動きを読むための基準点になる。
- 継続か、反転か: Break of Structure(BOS)は既存トレンドの継続を裏付け、MSS、別名 CHoCH はトレンドに逆行する反転の可能性を告げる。
- displacement が全て: 本物の構造ブレイクには displacement、実体の詰まったローソク足が運ぶ力強い値動きが要る。レベルを終値で超えきれない弱いブレイクは、たいてい liquidity sweep にすぎない。
- レンジを定義する: 確定したストラクチャーの一段ごとに新しいレンジが生まれる。これを premium and discount に分割して測れば、期待値の高いエントリー領域が浮かび上がる。
ICTのマーケットストラクチャーの見つけ方
市販の講座で教わる「高値切り上げ、安値切り上げ」という教科書の定義は、ここでは一旦忘れるといい。機関の目線で問われるのは、無数にある高値と安値のうち、どれが実際に効くのかという見分けの方だ。作業は、検証済みのスイングポイントをチャートに打ち込むところから始まる。
スイングハイとは、すぐ左右のローソク足よりも高い高値をつけた足のことだ。スイングローはその逆で、左右の安値より低い安値をつけた足を指す。この二点が土台になる。あとは、価格がこれらのポイントにどう絡んでくるかを見るだけだ。
以降に起きるイベントは、主に二種類だ。
- Break of Structure(BOS): トレンド方向へ、守られるべきスイングポイントを displacement を伴って突き破ったときに発生する。上昇トレンドなら、直前のスイングハイを勢いよく抜ける場面がそれだ。これで オーダーフローがまだ買い方向であることが確認できる。
- MSS(Market Structure Shift)、別名 CHoCH: 反転の最初の合図。直近のトレンドに逆らう形で displacement を伴い、最後のストラクチャーハイまたはローを生んだスイングポイントを破ったときに起きる。
CME Group のような主要取引所がマーケットストラクチャーを参加者とルールで定義するように、世界にはいろいろな定義がある。ただし裁量トレーダーに関係があるのは、そこに現れるフラクタルのパターンだ。肝は本物のブレイクと偽物の見分けで、すべてのブレイクが同じわけではない。この一事、私が痛い思いをして覚えた教訓だ。NYセッションの EUR/USD 1時間足では、直前高値の上へヒゲを伸ばして崩れる動きを何度も目にしてきた。displacement を伴う実体の終値確定がなければ、それは BOS ではなく、買い側の流動性を狙った judas swing だ。
強気のストラクチャーと弱気のストラクチャー
BOS の向きが、今の相場の状態を決める。しかもこれは静的なラベルではない。ローソク足ごとに書き換わり続ける物語だ。
強気構造
強気相場は、高値と安値を交互に切り上げていく。新高値が BOS で確認されるたびに新しいレンジが成立し、そのレンジは上昇の起点となったスイングローから新しいスイングハイまで伸びる。押し目はレンジの discount 側で支えられるのが普通で、具体的には fair value gap(FVG)や強気の order block で反応することが多い。最後の高値を生んだスイングローを価格が守り続ける限り、構造は強気のままだ。
弱気構造
逆に弱気相場は、安値と高値を切り下げながら進む。下方向への BOS が弱気のオーダーフローを確認する。有効なレンジは、下落の起点となったスイングハイから新しいスイングローまでだ。このレンジの premium エリアへの戻りは、売りを検討する場面として扱われる。最後の安値を生んだスイングハイを破らない限り、構造は弱気のままだ。
強気相場が高値を更新できず、最後の切り上げ安値を displacement とともに割ったなら、それが MSS だ。市場が『買い優勢から売り優勢へ、根っこの流れが変わりつつある』と告げている瞬間である。
ストラクチャーが物語を作る
マーケットストラクチャーは、ほかのすべての ICT 概念が載かる土台であり、市場がどこへ流動性を引きに行くのかを教えてくれる。古い高値と安値は 外部レンジの流動性、すなわち買い側と売り側のストップ群だ。一方、ストラクチャーの一段の中に残された非効率、たとえば FVG は内部レンジの流動性に相当する。
ICT 概念が描く典型的なアルゴリズムはこう動く。まず外部の流動性を取りにいく。次に価格をレンジ内へ戻し、内部の流動性が眠る地点で均衡を回復させる。そして再び外部の流動性へ手を伸ばす。この順序を掴むことが完全なナラティブ構築の出発点で、詳しくは 決定版 ICT マーケットストラクチャー フレームワークのガイドにまとめている。
LiquidityScan はこの分析の自動化を担う。たとえば CISD(Change in State of Delivery)エンジンは、MSS の前兆にも確認にもなりうるオーダーフローの転換を検出するために作られている。物語が変わる瞬間を、感覚ではなくデータで早く掴むための道具だ。
